帝京大学医学部附属病院

当院で乳房再建用ティッシュ・エキスパンダーおよび乳房インプラントの挿入術を受けた皆さまへ

2019年7月24日(米国時間)に、米国FDA(食品医薬品局)は、ブレスト・インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(Breast Implant Associated-Anaplastic Large Cell Lymphoma: BIA-ALCL)*のリスクから患者を保護するために、アラガン社のブレスト・インプラントおよびティッシュ・エキスパンダーを市場から自主回収(リコール)するよう要請しました。それに従い、日本でもアラガン・ジャパン株式会社のナトレル®410ブレスト・インプラント及びナトレル®133ティッシュ・エキスパンダーの自主回収および販売停止が決定しました。

以下の3製品が今回の回収、販売停止に該当いたします。
1.ナトレル® 410 ブレスト・インプラント
2.ナトレル® 133 ティッシュ・エキスパンダー
3.ナトレル® ブレスト・インプラント(テクスチャードタイプ)  ※2018年3月販売終了

現時点で、日本における健康保険を用いた人工物による乳房再建の手術では、アラガン社のティッシュ・エキスパンダーとインプラントのみが認可されています。そのため、当院では現在、ティッシュ・エキスパンダーおよびブレスト・インプラントによる乳房再建手術を中止しています。
現在、ティッシュ・エキスパンダーを留置している皆さまは、今後、インプラント挿入ではなく自家組織での再建を考慮するか、2019年9月以降販売再開となる予定のアラガン社のスムーズタイプインプラント(表面がツルツルしてBIA-ALCL発生のリスクは低くなりますが、形体的な制約があり破損や被膜拘縮などのリスクが増加すると言われています)で再建を行う、日本で認可はされていませんがBIA-ALCL発生リスクの低い他社の乳房インプラント製品を自由診療で挿入する、またはその製品の日本の保険診療への導入(未定)をお待ちいただくことが検討されます。
当院では、2014年にインプラントが保険適用となる以前から、乳房インプラントを用いた乳房再建術を行ってきましたが、インプラントの破損(10年で10%とされています)や合併症の発見のために、術後、年に1回以上の定期的な外来診察と、適時にエコー等による検査を実施しています。このBIA-ALCLは、まれな疾患ですが早期発見と適切な検査が大切になりますので、これまで乳房インプラントを用いた乳房再建術を受けられた皆さまには自己検診とともに、今後も引き続き定期的な通院を続けていただきますようお願い申し上げます。
不明な点、心配な点がございましたら形成外科担当医が対応いたしますので、形成外科外来の受診あるいは電話でお問い合わせください。
 

お問合せ先

帝京大学医学部附属病院 形成外科外来
電話:03-3964-1211(代)
内線:30312


また、日本オンコプラスティックサージャリー学会、日本形成外科学会、日本乳癌学会、日本美容外科学会の4学会から対応に関する声明が出されました。次のリンクまたは学会ホームページもご参照ください。 

乳房再建用ティッシュエキスパンダーの手術を受け、ブレスト・インプラント(ゲル充填人工乳房)による乳房再建を待機されている方へ  icon_pdf.png

ブレスト・インプラント(ゲル充填人工乳房)による乳房再建を希望されている方へ  icon_pdf.png

ブレスト・インプラント(ゲル充填人工乳房)による乳房再建を受けた方へ icon_pdf.png

ブレスト・インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)についてよくあるご質問icon_pdf.png

*ブレスト・インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)とは、T細胞性のリンパ腫と呼ばれるもので、乳がんとは異なる悪性腫瘍です。近年、乳房再建術や豊胸術後に生じるまれな合併症として報告されるようになりました。ほとんどが、バイオセルというザラザラとした表面構造を持つインプラントを使用した症例で発生しており、アラガン社のナトレル 410 もこのタイプに該当します。海外からの報告では、このインプラントが挿入されている方のうち約3300人に1人(0.03%)に発生するとされ、日本では今年初めて1人の発生が報告されました。インプラントを入れてから平均9年ほどで発見され(ただし、1年以内から23年までの発生報告があります)、症状としてはインプラント周囲に液体がたまり、大きく腫れてくることで始まることが多いとされています。このBIA-ALCLを発症しても、多くの場合はインプラントとその周囲の組織を切除することで治癒するとされています。一方で、発見が遅れ切除しきれなかった場合には化学療法や分子標的薬、放射線治療等の追加治療が必要となり、死亡した例も報告されています(米国での発症573例のうち33例、5.75%)。
すでに乳房インプラントが挿入されている場合、米国FDAや、それ以前に流通停止を決定していたEU、カナダでは、症状のない方に対する予防的なインプラント摘出手術は推奨していません。腫れやしこりがないかを自分でチェックするように自己検診を推奨しています。このリンパ腫の発生リスクが0.03%と低く、摘出手術を行った場合の出血等のリスクの方が高いと考えられるためです。

 

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